QuEra が、256量子ビットのアナログ量子プロセッサー「Aquila」を、Amazon Web Services(AWS)で利用できるようにした。昨年11月に意向が示されていたものだ。これは、パブリッククラウドベンダーの1社を通じて利用できる、最初の中性原子ベースのプロセッサとなるだろう。火・水・木曜日の週10時間利用できる予定。
プログラミングは、AWS Braket SDKが使用可能で、近々、プログラミング言語 Julia をベースにした QuEra 独自の Bloqadeソフトウェア・プラットフォームも Aquila に対応する予定である。
QuEraの技術は、量子状態を形成するためのルビジウム原子を基にしている。これには多くの利点がある。まず原子は中性であり、イオントラップ内の原子のように電荷を帯びていないため、原子を接近させて配置することができ、物理的な部品点数を少なくすることが可能だ。次に、原子はレーザーピンセットを使用して基板上に配置され、任意のトポロジーに配置できる(下の画像参照) 。これにより、エンドユーザーは、特定の問題に合わせてカスタマイズされた原子の物理的構成の作成が可能だ。トポロジーは、固定された2Dアレイ(二次元配列)やヘビーヘックス (重六角)アーキテクチャに限定されない。必要のない原子を基板上に配置する必要がなく、問題を構成するための柔軟性を提供する。
[ Examples of Different Potential Atom Configurations for the QuEra Processor. Credit: QuEra ]
中性原子プロセッサは、デジタルモードでもアナログモードでも動作するが、今回発売された「Aquila」は、アナログモードのみサポートしているようだ。アナログモードでは、「アナログ・ハミルトニアン・シミュレーション」を使用して、ユーザーが問題をハミルトニアンと呼ばれる数学的オブジェクトにエンコードできるようにしている。このハミルトニアンの下で、量子系の連続的な時間発展をシミュレートするようにコンピュータをチューニングすることができ、ノイズに対してより堅牢となる。このモードは、ゲート型マシンが処理できるすべての量子アプリケーションに適しているとは限らないが、最適化と量子化学シミュレーションにおけるとても重要な問題を扱える。また、QuEra も Pasqal も、量子アナログモードはゲート型マシンよりも早い時点で、量子的優位性を達成できるかもしれないと考えている。
アナログモードだけでなく、Juliaプログラミング言語や Bloqade SDKも、量子プロセッサをすでに使っている人にとっては新しいものかもしれないので、QuEra は初学者がこの技術をどのように使うかに興味を持っている。このタイプのプロセッサが一般に公開されたのはこれが初めてであるため、QuEra は初学者がこのタイプのプロセッサをどのように使用しているかを確認し、学んだ教訓を将来のマシンに取り入れてさらに有用なものにしたいと考えている。
今回の発表と QuEra の Aquilaプロセッサの詳細については、AWSでの提供開始を発表したプレスリリース 、AWSからの対応発表 、同社のウェブサイトでは Aquila の詳細についてのページ を公開している。
※参考
Aquila:アキラまたはアクイラ(イタリア語で「ワシ」の意味)
中性原子ベース:「冷却原子型」と呼ばれることもあるが、名称が統一されるまで英語原文に合わせていく。QuEraのHPでは、「neutral-atom」で統一して説明されている。