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IBM、2024年に量子の飛躍的進歩を約束 1


ニューヨークで毎年開催されている量子サミット。IBMはそこで、今後10年間のハードウェアとソフトウェア両方の量子ロードマップを発表した。これは、彼らがこれまでに提示しているロードマップの継続を表していると共に、2024年に向けた飛躍的な進歩を約束するものであった。


量子ユティリティ、新時代の到来


IBM は、量子の旅路を3つの時代に分けて考えている。


最初は「出現の時代」で、2016年の最初のクラウド マシンに遡る。2つ目は、IBM がこれから始まると信じている「実用性の時代」。これは量子コンピューターが総当たりの古典的シミュレーションを超えて問題を解決できる時代だ。3番目の「量子大規模化の時代」で、エラー訂正を使用して量子コンピューティングの可能性を完全に実現する。


IBM は、Quantum Utilityについて説明した論文を Nature 誌に掲載。そして、Nature論文の調査結果を要約したブログ記事、およびIBMによるQuantum Utilityの定義を記載した別のブログ記事を掲載した。


IBM Quantum Utility の定義では、Googleが「古典を超えた計算 (旧量子超越性) 」と呼ぶものの特性の多くを反映していますが、量子パフォーマンスの複雑さについての理論による正当化にはあまり重点が置いていない。

用語の当初の概念では、すべてのノイズ有り量子デバイスは「古典を超えた」計算ができると想定されていたとGQIでは指摘する。しかしながら、「NISQ」という用語は、これに遠く及ばないこれまでのデバイスの状況によって、その価値は大きく堕落してしまった。GQIは、IBMが「ユティリティの時代」と呼ぶものを、「真の NISQ時代」と呼んでいる。このようなシステムが、最先端の量子科学応用において、興味深い結果をもたらすであろうという一連の実証が増えてきている。それが商業的に有用なものとしてどの程度応用できるかについては、依然として激しい議論があり、また意見の相違がある。

2023 年に達成されるマイルストーン


技術的・時間的問題があるため、企業が将来のロードマップを提供することには常にリスクが伴う。確かに私たちのようなアナリストは、元のロードマップを保存し、企業が当初の計画を達成していない場合は指摘することになる。


以下は、IBMが1年前のQuantum Summit 2022で提示したロードマップである。当時彼らは、2023年までに量子ビットの品質を向上させた新しいHeronデバイス、量子ビットのスケーリングと冷却容量を試すためのCondor内部専用テストデバイス、ジョブのユーザー管理を容易にするQuantum Serverless、その他にも、いくつかのデバイスを導入する予定であることを示唆していた。以下の図の緑色のチェックマークからわかるように、年末までにこれらのマイルストーンはすべて達成される予定だ。



チューナブルカプラに基づく新しいハードウェアアーキテクチャ


Heronプロセッサによって、IBMは、数年来開発してきた2つの主要なアーキテクチャ・ストリームをうまく統合した。それは、「大きな鳥チップ(特にEagleとOsprey)」のスケール指向の製造技術と、最近の「小さな鳥アーキテクチャ(特にFalcon R8とEgret)」で開発してきた品質指向のチューナブル・カプラ技術である。


調整可能なカプラーは、2つの隣接する量子ビットの間に配置されるジョセフソン接合として実装される。これは、Google によるSycamoreデバイスに初めて実装され、それ以来、Rigetti、東芝、中国のシステムなどを含む多くの超電導プロセッサ開発企業により実装されてきた。調整可能なカプラーは、隣接する量子ビットを不要な相互作用から分離するのに役立ち、クロストークなどの問題を大きく軽減することができる。IBM にとっては、固定周波数トランスモン量子ビットのアプローチを維持しながら、ゲート速度を高速化する手段となっている。

その結果、量子ビットの品質が大幅に向上した。以下に示すのは、同社最高の127量子ビットEagleクラスプロセッサ (コード名: Sherbrooke) と、新しい133量子ビットHeronクラスプロセッサ (コード名: Montecarlo) のバージョン1を比較したグラフ。これは、EPLG測定(以下のセクションを参照) が 60% 以上改善され、Heronリビジョン2で追加改善が行われることを示している。


多くの量子コンピューティングのロードマップを見て気になるのは、ベンダーは将来の忠実度の向上を、それがどのように実現されるか裏付ける根拠がないまま予測していることだ。ここで重要なのは、IBMが計画しているHeron R2の忠実度向上を実現するために開発した手段、つまり 2レベルシステム (TLS) 調整機能について、しっかりと説明していることだろう。TLS 欠陥は、超電導回路デバイスのノイズの主な原因である。IBMは、固定周波数のトランスモン量子ビット(超伝導回路量子ビットとしては比較的長寿命)に焦点を当てたまま、その代わりに、量子ビットの動作に干渉する衝突を避けるためにTLS欠陥を「調整除去」することができた。特にTLS欠陥により、最も大きな影響を受ける量子ビットを特定して修正し、量子ビットの寿命の中央値を延長することができる。エラー抑制のための他の高度な技術と組み合わせると、GQIは、Heron R2が平均 2Q忠実度 99.9% を達成すると予想している。



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オリジナル記事:Quantum Computing Report (by GQI)

https://quantumcomputingreport.com/

翻訳:Hideki Hayashi







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