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2022年7月の研究論文・ソフトウェア編

By Dr. Chris Mansell


Title: Verifiable Quantum Advantage without Structure(構造によらない検証可能な量子の優位性)

Organizations: NTT Social Informatics Laboratories; Princeton University; NTT Research


このブレークスルーを理解するには、しっかりと背景を理解する必要がある。ご存じの通り、量子コンピュータが古典コンピュータよりも劇的に優れた実行時間で問題に答えることを量子アドバンテージといい、答えが正しいことを簡単に確認できることを検証可能性と呼ぶ。論文のタイトルにある「構造」とは、周期関数とランダム関数の区別のことだ。前者は Shor のような有名な量子アルゴリズムにとって重要であり、後者は暗号において重要である。この論文の著者たちは、いくつかの妥当な答えが考えられるような独自の問題を考案した。彼らは、ランダムなオラクル関数に入力の重ね合わせを与えることができる量子プロセッサーと、古典的なアクセスしかできない通常のコンピュータを考えた。この問題には、量子コンピュータが利用できるような構造がないにもかかわらず、検証可能な量子的優位性を生み出すことを示した。



Title: Modular Parity Quantum Approximate Optimization(モジュラーパリティ量子近似最適化)

Organizations: University of Innsbruck; Parity Quantum Computing GmbH; Institute for Quantum Optics and Quantum Information of the Austrian Academy of Sciences


量子近似最適化アルゴリズム(QAOA)は、量子・古典のハイブリッドプロトコルであり、とても有望である。例えばエラーがなければ、その性能は量子回路の深さに応じて増加することが保証されている。パリティQAOAは、量子ビットの接続性が制限されている量子デバイスにおいて、制約付き最適化問題を解くことを可能にするアプローチだ。これまで、制約を実装する2つの異なる方法が検討されており、それぞれに長所と短所があった。本研究では、これらの方法を組み合わせることで、与えられた問題とノイズの多い量子プロセッサに対して、最適な回路深度を選択できることを示している。このため、手順がモジュール化され、スケーラブルになるという。



Title: Towards Quantum Advantage in Financial Market Risk using Quantum Gradient Algorithms(量子勾配アルゴリズムを用いた金融市場リスクにおける量子優位性に向けて)

Organizations: Goldman, Sachs & Co.; IBM


金融機関は、金融派生商品の価格が、モデルや市場のパラメータの変化に対してどの程度敏感であるかを計算することによって、市場リスクをヘッジする必要がある。 通常、価格の閉形式が存在しないため、分析的なアプローチを取ることはできない。そのため、多くの計算を必要とするモンテカルロ・シミュレーションが使用されている。最近の結果では、類似した金融計算において、量子振幅推定が古典的なモンテカルロ法よりも優れたスケーリングにつながることが示されている。それを踏まえて本研究では、勾配を求める量子アルゴリズムによって感度解析が高速化できるかどうかを調査している。また、量子論理ゲートのクロックレートや、アルゴリズムを複数の量子処理ユニットで並列に実装できるかどうかなど、必要なリソースについても議論している。彼らは、先行する関連研究で見出されたよりも、量子的な優位性へのより有望な道筋を見いだした。



Title: Quantum operations with indefinite time direction(時間方向が不定の量子演算)

Organizations: The University of Hong Kong; University of Oxford; Perimeter Institute for Theoretical Physics


量子系を準備し、時間を置いてから測定する形で量子実験が行われることが多い。不思議なことに、自然法則の最良の理解は、時間的に対称であることだが、時間が経過すると、それらは常に「進む」と呼んでいる方向に流れている。もし仮に、何らかの方法で時間的に逆進する量子系の未来の状態を選択できるとしたら、我々の情報処理能力はどう変わるのだろうか?あまりにも難解で多くの人は匙を投げるだろう。しかし物理学者は、そこから素晴らしい洞察を得ることができる。特異な思考実験の重要性を理解するために、マクスウェルの悪魔が、熱力学の理解に与えた大きな影響を考えてみよう。著者らは、入力と出力が逆になっているシナリオを分析するための数学的フレームワークを確立した。これは、異なる順序で起こるプロセスの重ね合わせを含む先行研究を拡張し、一般化したものである。


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